マインドフルネスとは似て非なる!?
奥深い“仏教の坐禅”のススメ。

マインドフルネスと日本古来の精神統一は似ているのでは?と始まった本連載も、ついに最終回。和の伝統的な文化に触れることで、心が鍛えられ、もしかしたらマインドフルネスを理解できるかもしれない……と、若手俳優の栗原吾郎くんが色々な和体験をしてまいりましたが、今回はついに、マインドフルネスの根源ともいえる“坐禅”に挑戦します。しかしながら、先生の話を聞くと、仏教の坐禅はもっともっと奥深いことが判明。果たして、どんな体験になるのか……。

~坐禅とマインドフルネス~

マインドフルネスの根源ともいえる、坐禅。今回は西麻布にある、「大本山永平寺別院 長谷寺(ちょうこくじ)」にて参禅しました。長谷寺は曹洞宗の専門道(修行道場)です。その修行僧の指導役を勤める勝田岳芳さんに、坐禅とマインドフルネスについての関係性を伺いました。

「坐禅というと、どうしてもマインドフルネスがその延長線上にあると思われがちなのですが、実は似て非なるものなんです」

「『一行三昧(ざんまい)』という言葉がありますが、私たちが行じている修行はまさにこれです。朝起きて洗顔するときは、ほかのことはせず作法にのっとり顔を洗い、食事の時間がやって来たら、好き嫌いを言うことなく食事を頂くという、一つの行いに三昧になる。つまり24時間、目の前のことに対し『マインドフル』な状態で臨むということです」

「これだけ聞くと同じように感じるかもしれませんが、“考え方”が違います。マインドフルネスはそれを行うことで、その先に何か得るものがあることを期待します。けれど、坐禅を中心とした仏道修行では、その先には何も期待をしないんです」

「何も求めず、“私を仏の行いに修めること”を修行といいます。今回行う坐禅は、その修行の根幹をなしています。修行は、“オレ”や“私”という自我を忘れていくことなのです。そのため、マインドフルネスとは、考え方が異なります。それを理解していただいたうえで、坐禅を体験してほしいと思います」

手の作法から始める。

坐禅についての教えてを説いてもらう前に、まずは「三進退(さんしんたい)」と呼ばれる手の作法を学んでから、部屋に入ります。

「坐禅を行う前に、修行道場における三つの基本的な手の作法『三進退』を覚えましょう。まずは、“合掌”。左右の指5本をそれぞれつけ顔の前で合わせ、顔と手の間は拳ひとつ分空けます。中指は鼻の高さに合わせるのが正しい位置。挨拶のときなど、さまざまな場面で用いる作法です」

「ふたつ目は、“叉手(しゃしゅ)”。左手の親指を内側にして握り込み、手の甲を外に向けて、上から右手で覆います。これは立っているときや歩いているときに用いる作法です」

「みっつ目は、“法界定印(ほっかいじょういん)”。右中指の上に左中指を重ねたのち、親指を合わせて円を作ります。これは坐っているとき、坐禅や正座の際に用いる作法です。この基本を押さえましょう」

まずは坐禅について学ぶ。

手の作法に続いて、仏教についての坐学を学びます。修行僧はどんな生活を送っているかなどをはじめ、さまざまな作法や用語について教わっていきます。

「長谷寺の修行僧の1日は、朝4時半に起床するところから始まります。朝は早いですが、基本は一般の方の日常生活とさして変わりません。ただ、ひとつひとつの行いに作法があります。そうすることで、日常の何気ない行為が修行となります」

「例えば食事ひとつとっても、おかゆを1杯食べるのに40分〜1時間ほどの時間をかけます。それは仏として食事を頂く作法があるからです。作法に身も心も任せきることで、『ただ飯を食う』という行為が『尊い仏道修行』に昇華されるのです」

「坐禅にも作法があります。三大要素と呼ばれる3つの“調”を意識することが大切です。ただしこの“調”を『ととのえる』といった強制的な意味ではなく、ゆったりとした姿勢に自然に無理なく調整する・チューニングするといった意味で捉えてください」

「それを踏まえた上での、坐禅の姿勢に自ずと身が調う“調身(ちょうしん)”。坐禅の呼吸に自ずと息が調う“調息(ちょうそく)”。身と息が調うことで自ずと心が調う“調心(ちょうしん)”。これを覚えておきましょう」

調身を行う。

今度は実際に「調身(ちょうしん)」と呼ばれる正しい坐り方を学び、坐禅を組みます。

「坐る際は“左に側(そばだ)ち、右に傾(かたぶ)き、前に躬(くぐ)まり、後(しり)へに仰ぐことを得ざれ”が大切です。分かりやすい言葉に直すと、左右どちらかに傾いたり、前に俯いたり、後ろにのけぞったりした状態で坐禅をしてはいけないということです」

「さらに重要なことは、これは身だけではなく心の状態も示しているということです。あっちが得だ、こっちが損だと右往左往したり、他人と比較しては卑屈になったり、褒められて気持ちが大きくなったりしている自分を、真っ直ぐにするという意味があります」

「そのように姿勢が調うことで、自ずと呼吸(息)も調い、その姿勢(身)と呼吸(息)に心が寄り添っていることで、自ずと心も調ってゆきます」

僧堂にて坐禅を組む。

次はいよいよ「僧堂(そうどう)」と呼ばれる、坐禅堂で本格的に行います。

「曹洞宗の坐禅は“面壁(めんぺき)”といって、壁や襖、障子などに向かって坐ります」

少しでも心が乱れてしまったときや、うっかりウトウトしてしまったときは、直堂(じきどう)という坐禅を点検して回る係が持っている「警策(きょうさく)」と呼ばれる棒で右肩を叩かれることも。ちなみに心が乱れてしまっていると感じたときには、自分から志願して警策を頂くことも可能だそうです。

警策で叩かれてみる。

ということで、早速栗原くんも警策を行じて頂きました!

「警策で叩かれることは罰だと思われがちですが、違います。警策は“警覚策励(きょうかくさくれい)”という言葉の略称で、字にある通り、励ますという意味があるんです。しかしながら、いくら励ましの意味があるとはいえ、極力用いないことが理想です」

「明らかに集中していないときや足を何度も組み替え周りの人の坐禅を妨げているとき、また眠ってしまっているときなどは警策で叩くことがあります。自分自身で志願することも可能ですが、その場合は合掌して待ちます。また、行じられるときにいい音がするので痛そうに感じますが、実はそんなこともないんですよ」

栗原くんも自ら志願し、警策を受けていました。どうやら、身がぐっと引き締まるそう!

坐禅とは“習禅”にあらず。

坐禅の体験もいよいよ、終盤。そこでもう一度、坐禅の心得をおさらいします。

「“坐禅は習禅(しゅうぜん)にはあらず、唯だこれ安楽の法門なり”という教えがあるのですが、坐禅は何かを得るための手段ではありません。坐禅そのものが、身と心の調った穏やかな『仏』の姿であるということ覚えておいてください」

「そして、“身心一如(しんじんいちにょ)”という教えからもわかるように、身と心はひとつであり、心の器である身を調えることで自ずと心も調うと説きます。坐禅は『身と息が調うことで自ずと心も調う』という身心一如の行なのです」

「いわゆる一般的に言われているマインドフルネスとは異なりますが、坐禅はその効果を期待したり何かを得ようとするのではなく、むしろ逆で、自分を取り巻くしがらみを捨てる・手放すといった、言わば自らをリセットする原点に返る修行なのです」

と最後まで、深い教えを説いていただきました。これにて体験終了です。合掌。

~今回の和体験を経て~

今まで行ってきた和体験の集大成ともいえる“坐禅”。実際に行った感想は?

「教えにもあったように、坐禅を組んでいる間はすべてを忘れることができました。仕事のことやオーディションのことなど、いつも頭の中で考えていることが、その間はすっかり忘れられるんです。ただその境地に到達するまでに、少し時間はかかりましたね」

「人の気配や物音がすると、どうしても気になって身も心も乱れてしまう。けれど、それを通り越すとすっと何も考えずにいられるんです。そして、坐禅が終わったときには気持ちがスッキリ。清々しい気分になれました」

「また今回の体験である坐禅の考えは、今まで行ってきたことの、すべての基礎という感じがしました。書道でも茶道でも華道でも、すべて身と心を調えてから行わないとうまくできない。そのいちばん基本的な部分を教わった気がします」

「その反面、何も考えないというのは難しかったですね。どうしても頭の中に考えが駆け巡ってしまう。でもこれを機に、普段から余計なことを考えているんだということがわかりました。だからこそ、悩んだり落ち着かないときにはやってみたいですね」

「心の乱れは、身体に直結しているということも痛感しました。緊張した状態ではお芝居をすることはできないので、まずは自分の心を落ち着かせて、身体の力を抜くことを第一に行う。今までの和体験を通して、意識的にできるようになったのは大きいです。この企画を通して、人として少しは成長できたかなって思っています!」

和体験を通して成長した
栗原くんの次の連載も
乞うご期待ください!

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プロフィール


栗原吾郎

くりはら・ごろう/1996年1月12日生まれ。179cm。俳優としてテレビや映画・CMなどで活躍。ロックバンド・カスタマイZのヴォーカル・ギターとしても活動していた。2018年初夏公開の映画「EVEN~君に贈る歌~」に出演決定! TOKYO MX 「MUSIC BUSTER-EVEN ドキュメント-」(全4回)2018年3月7日より毎週水曜22:00~放送。
https://www.universal-music.co.jp/cinema/even/

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写真/黒坂明美 スタイリング/山本ひとみ ヘアメイク/佐々木シエラ 文/戸塚真琴 編集/井上峻 衣装協力/京都レンタル着物first (o-first.com)

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