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治療を選択することは、自分の人生を考えること。 ボーマン三枝さんインタビュー 後編

support : おっぱいと向き合う

DATE : 2019.01.10

治療を選択することは、自分の人生を考えること。 ボーマン三枝さんインタビュー 後編

乳がんと闘い、乗り越え、今を自分らしく生きる女性にインタビュー。前編に引き続き、31歳のとき、結婚3ヶ月で乳がんになり、乳がん経験者向けの下着店を立ち上げたボーマン三枝さんが、乳房再建や治療の選択に対する想い、自らの経験を通して伝えたいことなどをオープンに語ってくれました。

5年越しの乳房再建。言葉にできない嬉しさが。


――2018年6月に乳房再建の手術を受けたそうですね。

ボーマン:はい。子どもたちを実家の母と主人に預けて1週間入院しました。乳房再建は乳がん摘出手術と同時に行うことができるんですけど、私は妊孕性(にんようせい:妊娠する力)を最優先したいと思って、同時再建は見送りました。乳房再建では、通常はエキスパンダーという皮膚拡張器を数ヶ月間胸に入れて皮膚を広げるんですが、妊娠・出産をするかもしれない身体になるべく負担はかけたくないなと思ったんです。


――全摘手術から5年というタイミングで、乳房再建を決意した理由は?

ボーマン:“片胸ぺったんこ”の生活を5年間送ったんですが、そこで感じたのは「おっぱいがない生活は不便だけど不幸じゃない」ということ。むしろ子どもに恵まれ、起業もし、とても幸せだった。そこにおっぱいは関係なかったです。だから、乳房再建については本当に必要かどうか、時間をかけて考えてきました。患者会でたくさんの再建経験者の意見を聞いて、再建された胸を実際に見たり触ったりして……。そんななかで再建を決意したのは「煩わしいことなしに、おばあちゃんになっても温泉やスポーツを楽しみたい」と純粋に思ったからです。


――膨らみが戻った右胸を見て、どんなことを感じましたか?

ボーマン:全摘した胸って本当にぺったんこで、痩せた男子中学生の乳首をとったような感じなんですけど(笑)、手術後に目が覚めたら、女性らしい膨らみがちゃんとあって。できたての膨らみを見たときは、思わず「あっ❤」って(笑)。やっぱり、言葉にできない嬉しさがありましたね。

前向きになれたのは、納得して治療を選んだから。


――娘さんには乳がんのことや乳房再建のことを話していますか?

ボーマン:次女はまだ小さいので話していませんが、3歳の長女には「おっぱいの病気になったから切っちゃったんだよ。切ったから、もう大丈夫なんだよ」って話しています。「新しくおっぱい作ったよ」って再建した右胸を見せたら興味津々で触ってきて、「マミーのおっぱい、パンみたい!」って笑ってましたね。

――無邪気でかわいいですね!

ボーマン:きっと保育園でお友達に話しているんでしょうね(笑)。もう少し大きくなったら私の乳がん経験やセルフチェックの大切さもしっかり話したいと思います。ただ、乳がん検診を受けさせるタイミングや遺伝子検査については迷っていますね。少なからず身体への負担もあるし、ムダな心配はさせたくないので……。乳がんの医療は日進月歩なので、将来、よりいい検査法や治療法が見つかると信じています!


――乳がんはがんの中でも選択できる治療が多いと言われていますが、今後はもっと選択肢が広がっていくでしょうね。

ボーマン:そう、乳がんは手術の方法も薬も本当に選択肢がたくさんあるんです。だからこそ選ぶのも難しい。私も必死で情報を集めて、とことん考えました。ホルモン療法をしないことを選んだ以上、再発や転移の不安はついてまわりますが、妊孕性を最優先した自分の選択に後悔したことはありません。


――どうしたら、ボーマンさんのように前向きに乳がんと向き合えるのでしょうか?

ボーマン自分で納得して治療を選択したからだと思います。例えば、ホルモン治療を選択するとして、妊孕性の温存を知らないで選択するのと、知ったうえで選択するのとでは、同じ道を選択したとしても“心の持ちよう”は絶対に違うはずです。

治療を選択するということは、自分の人生を考えるということなんですよね。がんをとにかく早く治したいのか、将来子どもを持つ可能性を残しておきたいのか、仕事は続けるのか辞めるのか……それによって選ぶ治療法も変わってくる。お医者さんは忙しそうだし、なかなか質問しにくい、自分の意見を伝えにくいという人もいますけど、「自分の人生だから遠慮している場合じゃないよ」ってアドバイスしています。後悔しないために勇気を出してほしいですね。

今は自分が支える側。正しい知識とリアルな声を届けたい。


――11人に1人が乳がんにかかると言われていて、他人事ではないなと感じます。

ボーマン:私も乳がんになる前は、自分は大丈夫だって安心しきっていました。でも、人生は思いがけないことが起きるもの。もしもに備えて、正しい知識を身につけ、先々のお金の不安を解消しておくことは大事だと思います。私の場合は手術だけだったので、治療費は母が私のためにかけておいてくれた医療保険でまかなえましたが、薬物療法、放射線治療などをすると、通院費や薬代がかさんできますから。


――治療費の他に、女性としての自信や日常を取り戻すための費用がかかることもありますよね。

ボーマン:病状等に問題がなければ、乳房再建も今の医療技術で普通にできるんですよ。私は必ずしも乳房再建ありきとは思いませんが、乳房再建は決して特別なことや贅沢なことではないんです。患者会では、再建したおっぱいを見たり触ったりさせてもらうこともあるんですけど、本当にいろいろな作り方があるんです。どうせならとことんこだわって、理想のおっぱいを手に入れたいじゃないですか(笑)! そのためにも備えは大事。ウィッグも今は自然でおしゃれなものがたくさんあって、みんな思い思いに楽しんでいますよ。「もし再発して抗がん剤を受けることになったら、あんなウィッグもいいな」なんて考えているくらいです(笑)。


――乳がんの再発や転移を怖いとは感じませんか?

ボーマン:私の場合は非浸潤がんだったこともあり、日ごろあまり気にしていません。乳がんを漠然と怖いと感じるのは、正しい知識がない事が原因の一つかも知れません。正しい知識があれば、納得して前向きに治療に臨むことができると思います。患者会で同じ病気の仲間と話していると、本当に選択肢がいろいろあって、みんな悩みながらも自分の道を選んでいるんだなと勇気をもらいますね。ただ、まだまだ乳がんについて知らない人もたくさんいる。今まで自分が仲間たちに支えられてきたように、今度は自分がサポートする立場になって、悩んでいる乳がん経験者に私が体験したリアルな情報を届けたいと思っています。


――下着作りに協力してくれている「PinkRing」のメンバーなど、乳がん経験者の仲間の存在も心の支えになったんですね。

ボーマン:そうですね。私は「PinkRing」と「Cava!」という患者会に参加しているんですが、そこでヨガをやったり、仲間とたわいもない話をしていると、自分ががんであることを忘れることができたんです。最初はがんのことを忘れる時間が1日5分くらいだったんですけど、不思議なことに6分、7分と伸びていって……。5年経った今、がんのことは24時間のうち、23時間59分くらい忘れてます(笑)。

がんにとらわれず、大切なものを心から大切に。


――現在、再発予防のために心がけていることはありますか?

ボーマン:それが全然ないんです(笑)。適度にスイーツも食べるし、お酒も飲むし、ごくごく普通の生活を送っています。ヨガも楽しいからやっているし、食事も家族が健康でいられるようにと考えているだけ。“がんにならないため”ではなく、“楽しく生きるため”の生活です。がんにとらわれず、自分の軸を持ってシンプルに生きたいと思っています。


――これからチャレンジしたいことがあれば教えてください。

ボーマン:乳がんに関わらず、さまざまな若年性がんの啓発・サポート活動をしていきたいなと思います。あとは、趣味のヨガをもっと勉強してがん患者が運動できる場を提供し、新しい下着もどんどん開発していきたいですね。こうやって未来の妄想をしていると、ワクワクしてきます。


――明るくポジティブなボーマンさんと話していると、なんだか力が湧いてきます! 最後に、この記事を読んでいる方たちにメッセージをお願いします。

ボーマン:乳がんになる・ならないに関わらず、人生には限りがあります。だから、やりたいことはどんどんやったほうがいいし、人の意見はあくまでも参考程度に、いいなと思うところだけ知恵をいただく感じ。本当に大切な人・もの・ことを、心から大切にしてほしいです。私は乳がんになったけど、5年前より今の自分が断然好き。これは胸を張って言えます。みんなが大切なものを大切にして、ありのままの自分を好きになれたらいいですね。

PROFILE

ボーマン三枝 ぼーまん・みえ

「下着屋Clove(クローブ)」代表。1981年岡山県生まれ。介護福祉、旅行業界で働いたのち、2013年にイギリス人男性と結婚。結婚3ヶ月で乳がんが見つかり、右胸の全摘手術を受ける。2015年に長女を出産し、2016年下着屋『Clove(クローブ)』を立ち上げる。2017年に次女を出産、2018年6月に乳房再建の手術を受ける。自身の乳がん経験を綴った『31歳 結婚3ヶ月で乳がんの私がマミーと呼ばれる日』をホームページにて公開中。趣味は旅行、ヨガ、料理。好きな言葉は「転んでもただでは起きぬ」。
https://shitagiyaclove.com/