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乳がん手術により切除した乳房の再建について

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DATE : 2019.02.21

乳がん手術により切除した乳房の再建について

乳房切除手術を行うと、見た目の変化だけでなく、左右のバランスが崩れることにともなう肩こりなど肉体的な問題が生じることがあります。これを解決する手段のひとつが、乳房再建です。どのように行うのか、再建後のメリットとデメリットにはどんなものがあるのか、乳房再建を専門分野とする日本乳癌学会乳腺専門医の監修のもと、解説します。


目次
・乳房の再建とは
・乳房再建の方法とは
・乳房再建後に日常生活で気を付けたいこと

監修:じゅんこ乳腺クリニック院長 石黒淳子先生  

乳房の再建とは

手術によって乳房を切除したあとに、自分の体の組織や人工物(人工乳房)を使って乳房のふくらみを取り戻すことを乳房再建といいます。片方の乳房のふくらみがないことで水着が着られない、温泉に行けないなど、外見的・心理的なストレスを解消するだけでなく、左右のバランスが崩れることで生じる肩こりなど、肉体的な問題の改善も期待できます。
再建の方法や時期の選択肢は複数あり、行っている治療との兼ね合いや再建を担当する形成外科医との連携など、検討しなければいけないことも多いので、再建を希望する場合は担当医にその旨を伝え、よく相談しておく必要があります。



・乳房再建について

乳房切除手術を行い、なおかつ医師が再建手術可能と判断した方が対象です。治療方針や体の状態、本人の希望をふまえて、再建を行うかどうかの判断がなされます。
乳房温存手術行った場合でも、左右の乳房で見た目の違いが目立つ場合がありますが、基本的には乳房再建の対象にはなりません。近年では人工乳房による再建に保険が適応されるようになったことや、再建に対する認知度の高まりなどによって、見た目の自然さのために乳房切除手術+再建を選択する患者さんが増えてきました。

なお、いずれの方法で乳房再建を行った場合でも、それによって再発が増えたり、再発の診断の遅れにつながったりすることはありません。

・乳房再建の時期

乳房を再建する時期には2つの選択肢があり、それぞれ「一次再建」「二次再建」とよばれます。
一次再建……乳房切除手術のときに同時に再建手術も行うこと
二次再建……乳房切除手術が終わってから改めて再建手術を行うこと
それぞれメリット・デメリットがあるので、再建を希望する場合は双方よく検討して判断する必要があります。

また、再建術の回数によって「一期再建」「二期再建」の2種類に分けられます。
一期再建……一回の手術で乳房を再建する方法
二期再建……一度エキスパンダーという袋を挿入して皮膚を伸ばし、人工乳房を入れる余裕をつくってから人工乳房を入れる方法

この「一次、二次」と「一期、二期」を組み合わせて再建方法を表します。

乳房切除手術と再建手術を同時に行うことを「同時再建」と表現するケースがありますが、これは「一次一期再建」のことです。これを行うと、自分の乳房がなくなった状態を見ることなく再建ができます。
二次再建の場合は、再建のための手術を改めて行うことになるので、身体的負担は増えます。しかし手術後10年以上経過していても行えるため、時間をかけて再建方法を検討することが可能です。

 

乳房再建の方法とは



乳房の再建方法には自分の体の脂肪や筋肉(自家組織)を使う方法と人工乳房を使う方法があります。それぞれの特徴とメリット・デメリットについて以下で解説します。


[自家組織による再建]

自家組織による再建は主に、お腹の組織を移植する方法と背中の組織を移植する方法があります。自然でやわらかなふくらみと温度感のある乳房になります。

自家組織による再建の懸念点

お腹や背中に手術あとが大きく残るケースが多く、手術時間も長くなります。

お腹の組織を使った再建は、妊娠・出産を予定している人には適していません。将来妊娠・出産を予定している人は背中の組織を使う再建が適応となりますが、この方法は移植する組織の主体が筋肉なので、移植後筋肉が小さくなり(萎縮)、再建した側の乳房が小さくなってしまうという欠点があります。

お腹や背中の筋肉の手術あとにつっぱりや痛みがしばらく続いたり、筋力の低下を感じたりする人もいます。お腹の筋肉を使った再建の場合は、手術によって弱くなった部分から腸が皮膚の下に脱出する腹壁瘢痕ヘルニアや、お腹がぼっこりする腹壁弛緩が起こる可能性が考えられます。


[人工乳房を使った再建]

人工乳房を使った再建は、まず皮膚を伸ばすエキスパンダーという袋を胸の筋肉の下に入れ、そこに半年~1年程度かけて生理食塩水を少しずつ入れて皮膚を伸ばしていき、その後人工乳房に入れ替えるという流れで再建を行います。傷あとを増やさないよう、乳房切除手術のときの手術あとから再建することも可能です。
人工乳房はシリコン製で、術後にマンモグラフィ検査などを受けても問題ありません。自家組織を使う方法より、手術による身体的な負担は小さい傾向にあります。

人工乳房を使った再建の懸念点

放射線治療を受けたあとに人工乳房を使った再建を行うことはおすめできません。放射線治療によって皮膚が弱くなったり伸びにくくなったりすることがあるためです。

また、人工乳房は安全性が高いものですが、人工物である以上、感染や破損などのリスクがゼロとはいえません。エキスパンダーを入れているときに手術あとが赤くなったり、熱をもったりする場合には、感染の可能性があるためすぐに医師に相談します。

誰にでも起こりうる合併症に、乳房がボールのように固くなる被膜拘縮(ひまくこうしゅく)があります。異物である人工乳房が体内に入ると、体は異物の周りを被膜という膜で覆うのですが、被膜拘縮(ひまくこうしゅく)はこの被膜が厚くなった状態です。この場合、被膜を細かく切断するなどして治療します。異変を感じたらすぐに担当医を受診してください。


 

乳房再建後に日常生活で気を付けたいこと


人工乳房を使った再建、特に乳房切除手術と同時に再建を行う「一次二期再建」の場合、エキスパンダーがずれないように激しい運動は控え、リハビリの際は必ずブラジャーを着用します。ブラジャーの選び方については、再建方法によって担当医師から指示がある場合があるので、確認してみましょう。

また、人工乳房を使った再建を行った場合、1年に1回の検診が義務付けられています。人工乳房の劣化や破損は触診やエコー(超音波検査)でチェックできるので、定期検診の際に確認してもらうようにしてください。


乳房再建の選択肢それぞれについてメリットとデメリットと知り、自分の希望も含めて選択しましょう。

PROFILE

【監修】石黒淳子先生 JUNKO ISHIGURO

じゅんこ乳腺クリニック院長
大学在学中に友人が乳がんになったことをきっかけに乳腺科医を志し、がん・感染症センター東京都立駒込病院乳腺外科、愛知県がんセンター中央病院乳腺科医長などを経て2018年より現職。専門領域は乳がんの診断、治療、乳房再建を伴う手術と家族性腫瘍。クリニックは女性が入りやすいことがコンセプトでスタッフ全員が女性。不安を何でも話せる雰囲気づくりを心がけている。日本乳癌学会乳腺専門医、日本外科学会外科専門医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本乳がん検診精度管理中央機構検診マンモグラフィ読影認定医、乳房超音波読影認定医、家族性腫瘍コーディネーター。
http://junko-nyusen.com/index.html

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