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乳がんの転移について

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DATE : 2019.02.14

乳がんの転移について

乳がんの治療後、乳房とは離れた場所にがんが転移することがあり、これを遠隔転移といいます。どうして遠隔転移が起こるのかということに加え、治療法や、転移しやすい場所、転移がわかったときの心構えについて、日本乳癌学会乳腺専門医の監修のもとお伝えします。

目次
・乳がんの転移とは
・乳がん転移の治療と考え方
・転移がわかったときの心構え

監修:湘南記念病院乳がんセンターセンター長 土井卓子先生  

乳がんの転移とは

骨や脳・肺・肝臓など、乳房から離れた臓器で乳がんが再発して増えることを、「転移」または「遠隔転移」といいます。
乳房で発生したがんはどの臓器に転移しても乳がんの性質をもっているため、たとえば肺に乳がんが遠隔転移した場合でも“肺がん”ではなく「乳がんの転移」といい、乳がんの治療方針をもとに治療を進めていきます。



・乳がんの転移はどのようにして起こる?

乳房で発生したがん(乳がん)が血管やリンパ管のなかへ入り込み、血液やリンパ液の循環に乗って、他の臓器や器官に移動することで起こります。

手術で乳がんの病巣を取り去っても、そのときにはわからない小さな転移(微小転移)がすでに起こっていて、それが時間の経過とともに大きくなって見つかると考えられています。手術前の乳がんのしこりの大きさやリンパ節への転移に比例して、微小転移の確率は高くなる傾向です。

乳がんはどの臓器に移動(転移)しても、乳がんの特徴をもち続けます。

・乳がんが転移する確率は?

乳がんと診断されたときのしこりの大きさが1cm未満の場合、その時点で微小転移を起こしている可能性は10%未満、5cmを超えてからだと80%となると推定されます。

・転移しやすい場所

乳がんでは、骨や肺、肝臓、脳などに遠隔転移することが多くなります。骨の場合は、特に背骨や肋骨、骨盤などに転移しやすい傾向です。次のブロックで詳しくお伝えします。  

乳がん転移の治療と考え方

乳がんの遠隔転移が起こった場合、それがどの場所であっても、乳がんに対する治療を行います。また、転移がわかった場所以外にも全身に微小転移があることを前提として治療法を考えます。全身に効果のある薬物療法を行いつつ、転移した場所ごとの治療を行うこともあります。

・治療方針について

ホルモン療法が有効な場合は、まずはホルモン剤を使用した治療が行われ、その後抗がん剤を使った治療を行います。しかし早く効果を出す必要がある病状の時は、すぐに抗がん剤治療を開始する場合もあります。サブタイプがHER2陽性であれば、抗HER2薬を使用し、その後抗がん剤の使用が検討されます。それ以外の場合は、最初から抗がん剤による治療が行われるのが一般的です。
がんの進行を抑えたり、症状を緩和したりして、がんと共存していくことが治療の主目的となります。

痛みや苦しみなどを緩和するために「緩和ケア」という専門的なケアを受けます。
緩和ケアというと、終末期の患者さんのためのケアというイメージをもつ人もいるかもしれませんが、そうではなく、がんと診断されたときから痛みや苦しみの緩和のために行われるべきケアです。


・転移の場所による主な症状と治療方法

特定の場所に痛みを感じる、咳が続く、といった症状が出る場合もありますが、全く症状がないケースも少なくありません。ここでは、転移場所ごとの起こりやすい傾向にある症状と、転移の場所に応じた治療方法についてお伝えします。



骨への転移

乳がんが転移した方の30%で最初に起こるのが骨転移。転移した場所に応じて、痛みを感じたり骨が折れやすくなったりします。
骨折の可能性が高かったり、痛みが強かったりする場合は、乳がんに対する治療に加えて骨折や痛みの起こる頻度を下げる薬を使用し、放射線治療や骨を補強する整形外科的な手術を行うこともあります。痛みについては鎮痛薬でコントロールします。

脳への転移

脳転移が起こると頭痛や嘔吐、麻痺、けいれんなどの症状がみられます。病巣が大きくなると脳全体を圧迫するので、放射線療法によって病巣を小さくする治療を行います。状態によってガンマナイフ※などで病巣を個別に治療する方法と、全脳照射といって脳全体に放射線を当てる場合があります。病巣が1つだけで、手術しやすい位置にある場合に検討されるのが外科的な切除。脳には抗がん剤が行き渡らないので、脳転移の場合抗がん剤は使用しないのが通常です。
※ガンマナイフ:脳内の病巣部にガンマ線を集中照射する治療方法。外科的な手術をせずにナイフのように病巣を切り取ることができる

肺への転移

肺に転移しているときに感じやすい症状は、息切れや咳が続くなど。胸水が溜まっている場合はそれを抜く処置を行います。

肝臓への転移

肝臓に転移すると、おなかの腫れやみぞおちを圧迫されるような痛み、倦怠感や黄疸(おうだん)などの症状がみられます。多くの場合、外科的な治療は行わず、薬物による治療を優先します。  

転移がわかったときの心構え


医師とともに治療方法を選択し、今後どのように生きたいのかを考え、がんと共存していきます。

・正しい知識を身につけ、心が安らぐ方法を見つけよう

乳がんの転移がわかった方の多くが、困惑や不安、心理的な苦痛や孤立感などを感じます。

まず重要なのは、自分の体がどういう状態にあるのか、どのような治療方法があるのか、担当医師をはじめ医療スタッフとよく話し合うこと。そして自分が、これからどう生きたいのかを考えて治療の目的を設定することです。

がんの治療法は日々進歩しています。科学的な根拠に基づいた正しい情報を身につけて、自分の体について理解しましょう。そして、がんのことばかり考えて過ごすのではなく、日々の生活を楽しみ、気持ちをリラックスさせるような時間を積極的につくってみてください。

誰かのなにげない言葉に傷ついたり、大切な人でさえ自分の気持ちを理解してくれないと孤独を感じたりするときには、できるだけ一人で考えすぎず、抱え込まないようにします。各地のがん診療連携拠点病院にある相談支援センターで相談したり、患者会・援助団体などに参加したりすることで、心が安らぐ場合もあります。

一度は不安や恐怖を乗り越えても、ふとしたときにまた心の変化が生じてくることがあります。不安が強かったり、医学的なアドバイスがほしかったりというときは、精神科や心療内科など心の専門家に相談しましょう。


・医師としっかりコミュニケーションしよう



再発後はがんとうまく共存することが大切です。そのため、快適に過ごすことを目的に、長期間にわたりさまざまな治療をします。
つまり、あなた自身が、自分の人生をどう生きていきたいのかということと向き合って、治療方法を選択することが求められます。

あなたの考えや希望を、担当医師をはじめ医療スタッフとしっかり共有しておきましょう。コミュニケーションがうまくいかないと、望まない治療を受けることになったり、逆に望んでいる治療を受けられなかったりといったことも起こり得ます。 「ここから先をどう生きたいか」を考えて、治療方法を選択することが大切です。

PROFILE

【監修】土井卓子先生 TAKAKO DOI

湘南記念病院乳がんセンターセンター長
横浜市立大学医学部卒業後、医師として一貫して乳腺外科分野で経験を積み、乳がん及び乳腺分野での治療に従事。湘南記念病院乳がんセンター長として、医療者だけでなく体験者コーディネーターなどを組み込んだ乳がん治療チームを組織、形成外科と連携した乳房再建などの総合的な乳腺治療を目指す。横浜市立大学医学部臨床教授、日本乳癌学会乳腺専門医、日本外科学会専門医、日本外科学会指導医、日本消化器外科学会認定医、日本消化器病学会専門医、マンモグラフィ読影認定医。
http://www.syonankinenhp.or.jp/nyugan/

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