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進行した乳がんの症状と治療について

knowledge : おっぱいを知る

DATE : 2019.03.28

進行した乳がんの症状と治療について

乳がんは初めて診断されたときの進行状態で0~4のステージに分類されます。ステージが進行した状態の乳がんではどのような症状が起こり、どんな治療方法があるのでしょうか。特徴的な症状や治療方法について、医師監修のもと詳しく解説します。

目次
・進行した乳がんとは?
・[ステージ3B・3C]局所進行乳がんの症状と治療法
・[ステージ4]転移のある乳がんの症状と治療法
・「緩和ケア」とは?
・乳がんは早期発見・早期治療が大切

監修:昭和大学病院乳腺外科准教授 明石定子先生  

進行した乳がんとは?

乳がんは初めて診断されたときの進行状態で0~4のステージに分類されます。健康診断で乳がんが見つかったり、しこりなどの自覚症状があったりするのにもかかわらず、適切な治療を受けずにいると、がんは進行していきます。

ここではとくに、そのまま手術することが難しいところまで進行した乳がんである「ステージ3B・3Cの局所進行乳がん」と「ステージ4の遠隔転移をともなっている乳がん」についてご説明します。

  

[ステージ3B・3C]局所進行乳がんの症状と治療法

ステージ3のなかでも、とくにステージ3Bと3Cは「局所進行乳がん」とも言い、乳房表面の皮膚や胸壁(胸を形作っている骨格と横隔膜を含む、肺よりも外側の組織)にもがんが広がることがあります。
その際の症状としては挙げられるのは、乳房の変形、乳頭や乳輪部分の湿疹・ただれ、乳頭の先からの血液が混じった分泌液や、次に述べるがん性皮膚潰瘍などです。また、脇のリンパ節に転移したがん細胞が大きくなると、リンパの流れがせき止められて腕がむくんできたり、神経が圧迫されることで腕がしびれたりするケースもあります。

ステージ3B・3Cまで進行すると、そのまま手術することは難しく、体のどこかに微小転移(画像検査では見つからないような小さな転移)を伴っている可能性も高いので、薬物療法や放射線治療が主な治療方法となります。治療によってしこりの大きさや、腫れていたリンパ節が小さくなった場合には手術などを検討します。


-がん性皮膚潰瘍について


局所進行乳がんで現れる症状のひとつに、がん性皮膚潰瘍があります。
がんが大きくなって、乳房の皮膚にがんが露出し、皮膚が壊れてその部分が深くえぐれたようになる状態(潰瘍)のことを指します。

インターネット上で散見される「花咲き乳がん」というのは、がん性皮膚潰瘍の俗称のことで、正しい病名ではありません。

がん性皮膚潰瘍では、潰瘍部から血液や滲出液(体液)がにじみ出し、痛みが生じます。また、潰瘍部に細菌が感染して生じるがん性皮膚潰瘍臭という独特な悪臭が特徴です。出血や痛み、臭いのほか、乳房の外見も健康なときとはまったく異なるため、肉体的にも精神的にも苦痛は非常に大きいものとなります。特に臭いはとても強く、がん性皮膚潰瘍になった本人だけでなく家族や見舞い客にとっても負担になるケースも少なくありません。

がん性皮膚潰瘍の場合、治療としてはまずは化学療法を行い、縮小が得られれば手術を行います。十分な縮小が得られないなどの場合は放射線療法や薬物療法が適応となります。
がんそのものによる痛みには、全身に作用する痛み止めを使用します。病気になった方の自尊心の低下や社会的孤立感にも直結する悪臭(がん性皮膚潰瘍臭)に対しては、臭いの軽減効果の高い薬が開発されています。
 

[ステージ4]転移のある乳がんの症状と治療法

最も進行した状態であるステージ4は「しこりの大きさやリンパ節転移に関係なく、骨・肺・肝臓・脳など他の臓器に転移している状態」と定義されており、がんが乳房やリンパ節だけでない範囲にまで広がっています。
ステージ4の乳がんでは5年生存率(※)も他のステージに比べて低くなります。表のように、ステージ0から3までの5年生存率が80~90%台であるのに対してステージ4では33%という数字になります。
(※)がんと診断された人が5年後に生存している割合のこと(生存している人には再発している人も含まれます。また、事故などがん以外が原因で死亡した人も生存していない人に含まれます)

他の臓器にも転移しているので、手術は行わず、抗がん剤やホルモン剤治療を行います。抗がん剤はがん細胞だけでなく正常な細胞にも影響をあたえるため、吐き気や脱毛などの副作用が出ることがあります。ただ、最近は副作用の対策が非常に進歩しており、例えば吐き気に対しては抗がん剤を点滴する前に吐き気止めを使うことで症状をコントロールできるようになっています。


-遠隔転移について


転移することが多い臓器とその症状について解説します。

骨転移

乳がんが転移する場合、約30%の方で最初に骨に転移が起こります。中でも背骨や骨盤、大腿骨(太ももの骨)などへの転移がよくみられ、転移した場所に応じて痛みが現れます。また、がんが骨に転移すると骨粗しょう症のように骨がもろくなり、体重のかかるところでは骨折を起こして激しい痛みを伴うこともあります。 そのため、骨転移があると分かった場合、通常の薬物治療に加えて骨を丈夫にする治療を行います。骨折が起こりそうな場所がある場合は骨折予防のため、あるいは痛みが強い場合には痛みの緩和のため放射線療法を行うこともあります。

治療と並行して、さまざまな鎮痛薬を使って痛みをコントロールします。
脊椎(背骨)に転移すると、神経が圧迫されて手足のしびれや麻痺が現れることがあります。治療が遅れるとしびれや麻痺が回復しなくなるので、速やかな治療が必要です。

そのほか、骨からカルシウムが溶け出し、その結果血液中のカルシウム濃度が高くなって高カルシウム血症になる場合があります。のどが渇く、胃がむかむかする、尿の量が増える、お腹が張る、便秘気味になるなどの症状をきたします。脱水症状が強くなり、腎臓の機能が落ちてしまうので、早めに治療することが必要です。

脳転移

脳に転移したがんが大きくなると、脳全体が圧迫されて、頭痛、嘔吐、麻痺、けいれんといった症状をきたします。主に放射線治療で症状を和らげる治療を行いますが、条件がそろえば手術でがんを切除する場合もあります。

肺転移

肺にがんが転移すると、咳や血が混じった痰が出る、胸に強い痛みが出るといった症状をきたします。息苦しさが強いときは、胸水が溜まっている可能性があり、その場合は胸水を抜く処置が行われます。治療は抗がん剤を使って行われます。
 

「緩和ケア」とは?



進行した乳がんの場合、「緩和ケア」がとくに重要となります。

緩和ケアというと、治る見込みのない人に対して行うことというイメージをもっている人も少なくないと思いますが、決してそうではありません。がんと診断されたときからスタートし、がんの痛みやその他の症状を和らげることを目的として行われます。「サポーティブケア」という名前で行っている施設もあります。

がんの治療中は肉体的にも精神的にもさまざまなトラブルに見舞われます。がんそのものや治療による痛み、倦怠感、吐き気など肉体的な問題だけでなく、がんになったという事実による気分の落ち込み、手術によってできた傷や脱毛による見た目の変化を受け入れる難しさ、「死」に対する不安や恐怖……。これらの精神的な問題も苦痛となります。看病をする家族が抱える悩みやストレスも少なくありません。緩和ケア(サポーティブケア)では、がん治療中の患者とその家族のQOL(Quality(クオリティー) of(オブ) Life(ライフ);生活の質)の改善を目指しています。乳がんの治療は長期にわたることが多いため、がんそのものの治療と同じくらい治療中の生活の質の向上も重要です。


ステージ3B・3Cでは、乳房の変形などによる精神的な負担に対するケアが必要となる場合があります。がん性皮膚潰瘍の症状が現れると肉体的な痛みも出てきますので、精神面・肉体面の苦痛を和らげる緩和ケア(サポーティブケア)を積極的に検討する必要があります。

ステージ4の場合、転移した先の臓器でも痛みなどの症状が現れ、場合によってはだるさなども強くなることから、緩和ケア(サポーティブケア)の役割も大きくなります。緩和ケアの専門医がいる施設もありますので、心身の苦痛をがまんせずに医療スタッフに相談することが大切です。

肉体的な痛みに対しては、その度合いに応じた痛み止めを使用して痛みをコントロールします。精神的な苦痛については医師や看護師だけでなく、臨床心理士やカウンセラーなどが対応することもあります。その他、施設によって異なりますが、ソーシャルワーカーや管理栄養士、リハビリの専門職のスタッフなど、多職種のスタッフががん治療中の患者とその家族をサポートします。
 

早期発見・早期治療が大切



乳がんにかかる人は世界的にも増えているので、治療法や治療薬が世界中で開発されています。そのため、進行した乳がんであっても、がんと共存しながら生きていくことができる人も増えてきました。

ただ、早期発見と早期治療が重要であることには変わりません。セルフチェックで通常の自分の乳房の状態をよく知っておくこと、年齢に応じた検診を受けること、異常が分かった場合は専門医を受診し、速やかに治療を始めることで乳がんは治癒できる可能性が高くなります。

自分の命を守り、自分らしく生きていくためにも、早期発見・早期治療を心がけましょう。

PROFILE

【監修】明石定子先生 SADAKO AKASHI

昭和大学病院乳腺外科准教授。東京大学医学部医学科卒業後、同大学医学部附属病院第三外科、国立がん研究センター中央病院外科、同乳腺外科を経て2010年から同センター乳腺科・腫瘍内科病棟医長。2011年より現職。これまで3,000例以上の手術に携わる。日本外科学会指導医・専門医、日本乳がん学会乳腺専門医・指導医・評議員、検診マンモグラフィ読影認定医師。
http://www.showa-u.ac.jp/SUH/department/list/nyusen/index.html

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