検診を心がけることで、救える命がある。 NPO法人代表 岡田美春さんインタビュー 前編

knowledge : おっぱいを知る

DATE : 2019.01.31

検診を心がけることで、救える命がある。 NPO法人代表 岡田美春さんインタビュー 前編

乳がん検診が大切なのはわかっているけれど、さまざまな理由から受診のタイミングを逃している人も多いのでは? そこで、誕生日に検診を受ける習慣を呼びかけているのがNPO法人『バースデー健身』です。

代表を務める岡田美春さん自身も30代で乳がんが発覚し、それを乗り越えてきたという経験を抱えています。早期発見とはいえ、岡田さんが乳がんに立ち向かうことができた裏には、乳がんで亡くなった母親の言葉がありました。

「検診は必ず受けて」母の遺言を守り、早期発見。



――岡田さんが『バースデー健身』の活動を始めたきっかけについて教えてください。

岡田:私がまだ20代後半だったころ、母が50代で乳がんになったんです。祖父母を含めて家族でがんになった人はいなくて、「がんって何?」って知ることから始まりました。見つかったとき、母の乳がんはすでに「ステージ4」。胸を切るのは嫌だと本人が手術を拒否したこともあり、余命1年半と宣告されました。

そして偶然にも、母が入院したがん病棟では、私の同級生の友人が子宮頸がんの治療で入院していたのです。そこから母と友人は同志のようになり、お互いに励ましあいながら闘病を続けていたのですが、半年違いで2人とも亡くなってしまいました。


――大切な友人とお母さまを相次いで失うのはつらいですね……。

岡田:母も友人も検診を受けていませんでした。もし検診を受けていたら、2人とも早期発見で助かったかもしれない……。そう思うと悔やんでも悔やみきれません。母は闘病中に「検診は必ず受けて」と私に言っていたのですが、あれは私への遺言だったのかもしれない。そう思い、29歳から乳がんと子宮頸がんの検診を受けるようになりました。


――遺言をしっかりと守ったのですね。

岡田:でも、30代半ばで定期検診で乳房にしこりが見つかり、初期の乳がんでステージ1と宣告されました。がんと宣告されたら頭が真っ白になったりするイメージがあると思いますが、私はそこまで動揺しませんでした。

がんについて知識があったし、検診も毎年受けていたので、早期発見なら命まではとられないだろうと少しだけ冷静に考えられました。それに医師が、「岡田さん、ラッキーだよ。この歳で初期で発見できたのは、検診をすすめてくれたお母さんのおかげ。初期なら治療の選択肢もいっぱいあるから大丈夫」と言ってくれて母に心から感謝しました。  

自分の健康は後回し。そんな女性にこそ伝えたい。



――乳がん宣告を受け、どんな治療を選択されましたか?

岡田:母が手術をせずに亡くなったので、胸を切らないっていう選択肢はありませんでした。当時、娘がまだ幼稚園だったので、何が何でも子どものために生きなきゃいけないと、手術を受けることを決めました。ただ、全摘出にするか部分摘出にするかは、すごく悩んで。

それで、偶然にも同い年の奥さまを持つ主治医に「先生の奥さんならどうする?」とお聞きしました。そしたら「奥さんなら全摘」って即答。「じゃあ、私も全摘します」と決めました。毎年検診に行っていたので 先生とも本音で話せる信頼関係ができていたと思います。


――乳房の同時再建はしましたか?

岡田:当時はまだ名古屋で同時再建できるところがなくて、しませんでした。胸を失ったことはつらかったけど、それよりもつらかったのは、手術の翌日に娘を見たとき。たくさんの管につながれている私を見て「ママ、痛いよね」って、目にいっぱい涙を浮かべて……。胸が締め付けられる気持ちになり、ママは死ねないと思いました。ママは家族の太陽だから、家族のためにも元気でいなくちゃならないんだって。


――たしかに、母親が元気だと、家族も元気で明るくいられますよね。

岡田:そうなんです。でも、ちょうど乳がんの罹患率が上がる30代~50代って、仕事や子育てに忙しくて、自分の健康は後回しになりがち。だから、元気になったら、同世代の女性たちに向けて検診の大切さを伝える活動をしたいと思いました。

誰かのためというよりも、自分のため。がんで母や友人を失ったこと、自分が乳がんになって胸を失ったことを嫌な歴史にしたくない。自分の経験を人に話すことで自分自身を癒して元気になりたい、それが少しでも人の役に立てばいいなと思いました。  

一言がきっかけになる。微力だけど無力じゃない。



――検診の大切さを伝える活動をしようと思ってから、まずどんなことを始めましたか?

岡田:活動を始めた術後は、友人、幼稚園のママ友、近所の人など、身近にいる100人くらいの方に話をしたり、メールを送ったりしました。

最初は「うちはがん家系じゃないから大丈夫」「マンモグラフィって痛いんでしょ?」と、取り合わない人が多かったです。私が「がん家系じゃなくてもなることがあるよ」「手術の方が100倍痛いよ」と自分の経験を踏まえて話すと、ほとんどの人が検診に行ってくれるようになりました。

私が検診の大切さを伝えた100人のうち、数人に子宮頸がんが見つかり、1人は乳がんの経過観察に。のちに手術した方もいますね。「あなたに言われなかったら検診に行かなかった。本当にありがとう」ってすごく感謝されました。


――実際に乳がんを経験された岡田さんの話だからこそ、胸に響いたんでしょうね。

岡田自分の経験をたった数分話すだけで、数年後に救える命があるなら、伝える意味があると思いました。今も、近所のスーパーで隣に居合わせた人に「定期検診行ってます?」って話しかけたりしますよ(笑)。種まきのような地道な活動ですけど、たくさん種をまいて大切に育てたら、いつか芽が出て、花咲くこともある。その花が数年後、どこかのご家族の笑顔であってほしい。微力だけど無力じゃない。そう思いながら活動を続けています。


後編では、『バースデー健身』の具体的な活動内容について、岡田さんにお話を伺います。誕生日に検診案内が届く「バースデー健身メール」の登録方法や、実際に登録してみた感想もお届けします。

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PROFILE

岡田美春 おかだ・みはる

NPO法人『バースデー健身』代表。29歳の時、同級生を子宮頚がんで亡くし、その半年後に母を乳がんで亡くす。その後しばらく不安とストレスに苦しむも、待望の一人娘が誕生。母の遺言通り子宮頸がんと乳がんの検診を受けるも、30代半ば 定期健診で自身に初期の乳がんが発覚し、手術を受ける。2012年12月 NPO法人『バースデー健身』設立。自身の経験を踏まえ、誕生日にがん検診を受ける習慣を呼びかけている。
https://www.birthday-checkup.me/