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乳がんの治療法と選択肢、治療にかかる期間や費用について知ろう

knowledge : おっぱいを知る

DATE : 2018.10.15

乳がんの治療法と選択肢、治療にかかる期間や費用について知ろう

日本人女性がかかるがんの中で、もっとも多いのが乳がん。誰にとっても他人事ではありません。この記事では具体的にどのような治療法があるのかについてお伝えしていきます。ステージごとの乳がん治療の選択肢や、治療にかかる期間や費用、自分に合った治療法を選ぶことの重要性なども含めて、医師の監修のもとご説明します。

目次
・乳がんの治療法
・ステージごとの、乳がん治療の選択肢
・乳がんの治療期間と費用
・自分に合った治療法を選択するために

監修:むらさき乳腺クリニック五反田 院長 池田紫先生 

乳がんの治療法

乳がんの治療は「手術療法」「放射線療法」「薬物療法」の大きく3種類があります。治療はこれらを組み合わせて行われるのが一般的です。また、手術療法と放射線療法は、乳房にターゲットを絞った治療であることから「局所療法」と呼ばれ、薬物療法は治療の範囲が全身におよぶため「全身療法」と呼ばれます。

・手術療法

乳がんの治療では、手術によってがんを取りきることが基本です。
手術には乳房を残す「乳房部分切除術」と、乳房を全部切除する「乳房切除術」があります。そして、乳房の切除後には、本人の希望次第で「乳房再建術」(新しく乳房を作る手術)を行う場合もあります。
「乳房部分切除術」の後は放射線治療が原則的には必要ですが、「乳房切除術」の場合は必要のないことがほとんどです。

乳がんのリンパ節転移はまず腋窩(わきの下)に起こることが多く、乳房から最初に行き着くリンパ節を「センチネルリンパ節」と呼びます。画像検査などでリンパ節転移がないと判断された場合でも、薬剤を注射して「センチネルリンパ節」を見つけ出し、病理検査で転移の有無を調べます。リンパ節転移がない場合はこれ以上の手術を行いませんが、リンパ節への転移がある場合に行われるのが「腋窩リンパ節郭清」(わきの下のリンパを切除する)です。術後にリンパ浮腫(わきから腕がむくむ)が起こることがあります。

・放射線療法

高エネルギーのX線や電子線を体の外から照射する治療法です。放射線には、細胞の増殖を防いでがんを小さくする効果があり、乳房部分切除術のあとや再発進行がんへの治療に用います。
放射線の当たる皮膚に赤みやかゆみが起こるケースがありますが、適切なスキンケアで改善します。全身的な副作用はほとんどありません。

・薬物療法

薬物療法は、「手術前にがんを小さくする」「再発を予防する」「手術が困難な進行がんや再発に対して、延命およびQOLを維持・向上させる」ことなどを目的として行われる治療法です。
抗がん剤治療などの「化学療法」、女性ホルモンの働きを抑える「ホルモン療法」、がん増殖にかかわる物質をターゲットにした「分子標的治療」などがあります。

服用する抗がん剤の種類によっては、吐き気・嘔吐、下痢、口内炎、倦怠感、脱毛など、さまざまな症状が起きる場合がありますが、現在は副作用の少ない薬の開発が進んでいます。
 

ステージごとの、乳がん治療の選択肢

乳がんの治療方法を決める際には、がんの性質やステージ(病期:がんの進行度を表す)、がん細胞の性質(ホルモン受容体、HER2受容体、悪性度など)、全身の状態、年齢、合併する他の病気の有無などに加え、治療を受ける本人の希望を考慮しながら選択していきます。
ステージ0は非浸潤がん、ステージⅠ以上は浸潤がんといわれ、中でもステージⅠ以下のものは早期乳がんといわれています。

【ステージ0期】

乳房部分切除術、または乳房切除術を行います。
乳房部分切除術を行ったあとは、放射線治療が必要です。手術とあわせて「センチネルリンパ節生検」(リンパ節にがん転移がないか調べる)を行う場合もあります。手術後には、多くの場合は薬物療法の必要はありませんが、がんの広がりや形態、性質などから再発のリスクによっては、再発を予防するための薬物療法が行われることもあります。

【ステージI~ⅢA期】

乳房部分切術、または乳房切除術を行います。
乳房部分切除術のあとには放射線治療が必要ですが、乳房切除術の場合も術後に放射線治療を行うことがあります。腫瘍が大きい場合には、化学療法(抗がん剤治療)でがんを縮小させてから手術を行う「術前化学療法」という手段をとることもあります。
病状によって「センチネルリンパ節生検」を行い、明らかな転移が認められると、わきの下のリンパ節切除が検討されます。

手術後には切除した組織を検査して、がんの広がりや形態、性質などから、再発の危険性を調べます。再発を予防するために行われるのが薬物療法です。

【ステージⅢB・ⅢC期】 局所進行がん

薬物療法(ホルモン療法、化学療法、分子標的治療)をまずは行うことが原則です。薬物療法を始める前には病理検査をし、使用する薬剤を選択します。III期では、薬物療法を行ったあとに手術を行うこともあります。乳房部分切除術または乳房切除術に加えて、「腋窩リンパ節郭清」(わきの下のリンパを切除する)を行うこともあります。再発を予防するための放射線治療も併せて行います。

【ステージⅣ期】 遠隔転移を伴う乳癌

転移乳がんとして薬物療法を行います。疼痛や出血などがある場合は乳房の手術や放射線治療を行うこともあります。痛みやつらい症状がある場合には、がんの治療と併せて、それを和らげるための緩和ケアも行います。 

乳がんの治療期間と費用

乳がんの初期治療にかかる期間と費用は、がんのステージ、治療の内容、組み合わせ方によって異なります。ここでご紹介するのは、あくまでも一例です。

・手術、入院費用の例

入院7日間・センチネルリンパ節生検・温存手術(腋窩リンパ節郭清なし)
⇒総額約75万円/実際に支払う金額(3割負担の場合)約23万円

入院14日間・乳房切除術・腋窩リンパ節郭清あり
⇒総額約100万円/実際に支払う金額(3割負担の場合)約30万円

※公的保険が適用されない入院中の食事代、差額ベッド代などの諸費用は別途必要です。

・放射線療法の費用の例

放射線療法(温存手術後25回照射の場合)
⇒総額約47~70万円/実際に支払う金額(3割負担の場合)14~21万円
 ※週5日、5週間の治療を行うことを想定

1回の支払い額は約5000~8000円(初回は管理費など、およそ1~1万6000円加算)

・薬物療法、ホルモン療法の例

LH-RHアゴニスト製剤・皮下注射(リュープリン 4回注射の場合)
⇒総額およそ29万円/実際に支払う金額(3割負担の場合)8万8000円
 ※12週ごと、1年間の治療を行うことを想定

1回の支払い額はおよそ2万2000円 

自分に合った治療法を選択するために

乳がんの治療は、手術療法、放射線療法、薬物療法などを組み合わせて行うので、治療方法は何通りもあるということになります。自分にとってどの方法が最善なのか、医師としっかり話し合いのうえで決めましょう。

・医療機関や医師の選び方

乳がんという診断を受けた場合は、本当に良い医師、医療機関を見つけるために少し時間をかけてください。「その人にとって最善の治療は何か」ということを考えてくれる医師、医療機関を落ち着いて選ぶことが大切です。

乳がんの患者さんの数が比較的多い医療機関の方が「よりよい臨床結果と治療成績を得られる」という報告もありますので、乳がん治療に特化した医療機関を探すというのも良いでしょう。

治療では、主治医との関係性が重要になります。質問にしっかり答えてくれるか、難しい内容をわかりやすく、納得できるまで説明してくれるか、積極的なサポートをしてくれるか、プライバシーを尊重してくれるか、セカンドオピニオンに消極的ではないか、などが重要なチェックポイントです。

医療機関を探す際には、「がん診療拠点病院(厚生労働省が認めた地域のがん診療の中心となる病院)」が、地域住民の相談に応じてくれます。厚生労働省や国立がんセンターのホームページからも検索が可能です。

・ライフスタイルにあわせた治療法の選択を

乳がんのタイプや進行状況は人それぞれです。個人のライフスタイル、生活信条などもひとりひとり異なります。標準的な治療に自分の生活をあわせるだけでなく、ご自分のライフスタイルに応じて治療法やその組み合わせを選択していく、という考え方も大切です。

また、がんの治療は長期間に渡るケースが少なくないため、「がんの治療をしながら、充実した人生を過ごす」ことがとても重要。働き続けたい、将来的に子どもを持ちたいなど、手術後の希望を遠慮なく医師に伝え、納得がいくまで治療法について相談してください。

PROFILE

【監修】池田紫先生 MURASAKI IKEDA

むらさき乳腺クリニック五反田院長
日本医科大学卒業後、昭和大学病院にて研鑽を積み、ブレストセンター設立にも携わる。2011年にはシンガポールに留学し、ホルモン剤や分子標的治療薬が効かない乳がんの病理特徴についての研究に従事。2018年、むらさき乳腺クリニック五反田を開院。昭和大学病院、およびその他の大学病院やがん専門病院、総合病院と連携し、納得のいく治療が受けられるトータルサポートをしている。
URL:http://www.murasakibreastclinic.com/

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