ファインダー越しに感じた「健康」

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高齢者を撮り続ける男が見た、
健康の先にある心のみずみずしさ。

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ポートレート、スナップ、ランドスケープ……。ファインダー越しに、瞬間瞬間を切り取る写真家たち。カメラという武器を片手に身ひとつで戦い、時として被写体と深く向きあうことも。そんな彼らだからこそ、「健康」について何か思うこと・感じることがあるのではと思い、話を聞いてみることにしてみました。最初に会いに行ったのが、強い生命力にあふれた高齢者を撮影し続ける写真家・田中良知さん。田中さんを惹きつけてやまない高齢者の魅力、そして彼らを通じて導き出した「健康」とは?

会いたい人に会いに行く。
極端な話し写真は撮らなくてもいいと思ってます。

「高齢者を撮影し始めたのは2005年。きっかけはボランティアで参加した、ダライ・ラマ法王の撮影。そこでお会いした法王が、かなり高齢なのに威風堂々としてすごくカッコよく、感銘を受けたんです。当時は、自分らしさよりも要求された写真を撮ることが多く『本当に撮りたいものは?』と自問自答していたんですが、『生き生きとした高齢者を撮りたい』という気持ちが芽生えたんです。90年100年生きている人たちに、僕らは太刀打ちできない。だからこそ、ずっと虚構の世界を写す仕事をしてきた自分にとって、裸で真正面から向き合える被写体だなと思えたんです。しかも、そこでずっと音信不通になっていたアートディレクターの大久保學さんと偶然再会し、彼も僕の想いに賛同してくれました。『気と骨』というプロジェクト名で、大久保さんが取材をし、僕が撮影を担当する形で企画はスタート。最初は、自主企画で特に露出する場もなかったんですが、今では倫理研究所の発行する雑誌『新世』で連載するまでになりました。でも、当時も今も変わらないのは『会いたい人に会いに行く』ということ。極端な話、会うのが目的だから撮らなくてもいいんじゃないかなと今でも思っています(笑)。なので、この撮影のポートレートではフィルムしか使いません。デジタルカメラと違い、多くの枚数を切れないので、僕自身の集中力やモチベーションもあがりますし、本気で被写体を見つめることができる。フィルムを使う最後の仕事だとも思っています。『気と骨』に関しては、写真的な方法論の実践やこの人に会いたいという欲求も含め、本気で楽しいライフワークとしてやっていますね」

健康でいることは、肉体以上に心が大切だと、高齢者を通じて感じます。

「今回のインタビューを受けるにあたり、『健康』について改めて考えてみました。ですが、簡単に言葉で形容できるほど、生易しいものではないのかもしれません……。僕自身の話をすると、人の顔が好きなんです。だから『気と骨』の連載でも顔の写真をトップにさせてもらっています。顔の変化は心の変化にもつながっていると思うんですが、人一倍そういうのを感じ取りやすいからこそ、人の顔を撮りたいと思い続けているのかもしれません。身体的なことと心は通じあっているはずなので。僕らが撮影させて頂いた高齢者の方々は、80歳を超えても仕事や活動を積極的にしていて、やりたいことや仕事がある。それを持続するパワーもある。みんな身体以上に心が健康です。僕らみたいな(取材に来る)人間を受け入れているくれる度量もありますし。その心に、病気のない身体がついてきている気がします。一番印象に残っているのが、現在102歳(撮影時は98歳)の現役スイマー・長岡三重子さん。今でも『金メダルを取りたい』って想いで頑張っているからこそ、若々しくてエネルギーに満ち溢れていて、もちろん健康です。心のみずみずしさがあって、身体的な健康が伴うんだなと、彼らを撮影するたびに毎回思わされています」

プロフィール

田中良知

たなか・よしとも/スタジオアシスタントを経て、十文字美信氏に師事。1994年フリーランスとなる。現在は、広告・雑誌・ポートレート・ランドスケープ等、幅広く活躍。2005年から大久保學さんと自主企画として始めたプロジェクト「気と骨」で、80名以上の高齢者を撮影。2010年よりプロジェクト名をそのまま冠した連載を、倫理研究所が発行する月刊誌『新世』にて掲載。今まで紙面で掲載された内容は、Webでも展開している。
http://www.kitohone.com/index.html

写真/田中良知 文/原田ふくみ 編集/戸塚真琴

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